パリに何度か行くうちに、街のいろんなところにあるマカロンに気づくようになりました。日本ではマカロンといえばデパートやちょっと高価なケーキ屋さんを中心に見かけますが、パリでは名の知れた店の華やかなウインドウに限らず、地元のパンやお菓子を売る店でケーキやチョコレートの隣に当たり前のように並んでいます。また、宿泊したホテルの客室で出迎えてくれたり、お土産のモチーフとして目を楽しませてくれたりすることも。この記事では、パリの街で、マカロンがどんな場所にどんな姿で現れていたのかを、私が撮影した写真をもとにたどります。
フランスでのマカロンの位置づけ
最初に興味深い調査結果をご紹介します。フランスの製菓の見本市であるサロン・ド・ラ・パティスリ(Salon de la pâtisserie)のために、調査会社OpinionWayが行った調査があります(Sondage OpinionWay pour le Salon de la pâtisserie)。2023年5月、フランスの18歳以上の人口を代表するように集めた1,024人に13種類の菓子を示し、好きなものを複数選んでもらった調査です。
マカロンを選んだ人は23%で、13品の中では9位でした。上位はフルーツタルトとフレジエ(いちごのケーキ)がともに40%、エクレアまたはルリジューズ(シュークリームを重ねたお菓子)が36%。マカロンの順位はミルフィーユやパリ・ブレストよりも低く、定番の菓子の中では振るわなかったといえます。
それでも、観光客が集まるパリでは、マカロンはフランスらしいスイーツの象徴として使われているようでもあります。菓子店の華やかなウインドウを彩るだけでなく、街のあちこちに息づいています。

重さで売る店と1個ずつ売る店

カルトン(Carton)という菓子店の前を通ったとき、色の違うマカロンをミックスした詰め合わせがショーウインドウに置かれていました。簡易的な紙箱に入って、ラップされています。商品の前に置かれた札には「ASSORTMENT」とあり、何個入りとは書かれておらず、150グラムで8ユーロ、200グラムで10ユーロ、300グラムで15ユーロ、400グラムで19ユーロと重さで表示。隣にある薄い焼き菓子の袋にも同じ札が付いていたので、この店ではマカロンも焼き菓子と同じ扱いだったようです。マカロンは1個ずつの重さがほぼ揃っているので、店の人に聞けば「150グラムなら8個だよ」などと答えてくれそうな気もします。

ピエールエルメ(Pierre Hermé Paris)のショーウインドウのマカロンは、カルトンとは違う売られ方でした。フレーバーごとに白い角皿に分けて盛られ、手書きの札にはその名前と1,50€ Pièceの文字。右側には、PHのロゴ入りの箱に詰めたものも並んでいました。1個ずつ売られていることがわかります。
グラムで売られていた街のお菓子屋さんのマカロンと、1個ずつ値段が付けられていたメゾンのマカロン。同じマカロンでも、店によって扱いが違っていました。街の菓子店では、ほかの焼き菓子と並ぶ日常のお菓子。高級メゾンでは、味やブランドを選んで買う商品。特別な菓子という一面だけでは語れないようです。
ラデュレのミントグリーンとともに
パリのマカロンを代表するメゾンのひとつがラデュレ(Ladurée)。2026年現在はパリ市内だけでも18拠点を擁していることが公式サイトからわかります。よって、パリを歩いているとラデュレのブランドカラーのミントグリーンを本当によく目にします。

ラデュレはショーウインドウを眺めるだけでも楽しいのですが、店内で食事をしたことも、テイクアウトしたこともあります。ばら売りのマカロンは好きな味を選ぶと小さな紙袋に入れてくれます。小腹が空いたときにホテルの部屋で食べるのにちょうどいい量です。

展覧会にはミニラデュレが

2008年、パリの展示会場・美術館であるグランパレ(Grand Palais)でマリー・アントワネット展が開かれていました。ちょうどパリを訪れていたので見に行きました。見終わって出口へ向かうと、馬車の荷車のような形をした露店タイプのラデュレが出店されていました。この出店形式は空港などで見かけることもあります。
このときは、展示内容に合わせて「マリー・アントワネット」と名付けた、ばらの香りのピンク色のマカロンを売っていたと、当時の発表を後から読みました。ソフィア・コッポラ監督の映画『マリー・アントワネット』(2006年)でも、劇中の菓子はラデュレが手がけていました。
リッツのウェルカムスイーツとして

改装前のリッツパリ(The Ritz Paris)に泊まったときのことです。部屋のテレビの横、大理石の天板の上に、ガラスの角皿が置かれていました。皿には金色で「HOTEL RITZ」の紋章。その上には、淡い緑のマカロンが2個と金の模様が描かれた四角いチョコレートが2個、互い違いに並んでいました。

すぐ隣には電気ケトルと白い碗、鉄瓶と茶葉が用意されていました。お茶と一緒にどうぞということなのでしょう。
部屋に入ってこの皿を見つけたとき、さすがリッツだなと思いました。パリのヴァンドーム広場に面する伝説的なホテルが、ゲストを迎えるスイーツとしてマカロンとチョコレートを選んでいた。この事実は、マカロンの低からぬ存在価値を裏づけていると私は受け取っています。
モチーフになったマカロン
パリでは、食べられないマカロンにもよく出会います。

市内を散策していると、緑のテントが目印の雑貨店ラ・ヴェセルリー(La Vaissellerie)をときどき目にしました。日常使いに向いているお皿やフォーク、小さなバッグや置物などが売られていて、地元の人にも観光客にも愛されているようで、ここに立ち寄るのが楽しみでしたが、残念ながら2020年に全店舗が閉店しました。あるときここで見つけたのが、可愛らしいマカロンがあしらわれた缶です。

母と二人で感激し、店の奥から在庫も出してもらい、かなりの数を買いました。私は自分用に、母は日本に帰ってからお土産として配りました。母が買ったうちのひとつは実家の飾り戸棚に鎮座しています。

同じ店の壁の一部は、パリらしいマグネットで埋め尽くされていました。エッフェル塔、バゲット、ワイン、チーズ・・・。フランスを思わせるモチーフが集まるなかに、「MACARONS de Paris」と書かれたハート型のマグネットがいくつも交じり、エッフェル塔とマカロンを組み合わせたマグネットがほかにもあります。パリの思い出を持ち帰るためのモチーフのひとつとしてマカロンが選ばれていることがわかります。

デパートの文具売り場には、ラデュレのマカロン柄のノートや手帳が並び、奥にはマカロンのミニチュアがつなげられたストラップも置かれていました。ギャラリーラファイエット(Galeries Lafayette)は観光客も多いので、お土産品としての需要もあると推測できます。
パリで見たのはマカロン・パリジャン

フランスではそれぞれの地方でいろんなタイプのマカロンが受け継がれていて、フィリング(クリーム)をはさまないタイプのマカロンも少なくありません。
パリで出会ったマカロンは、どれもシェルやコックと呼ばれる生地の間にフィリングをはさんだ形。マカロン・パリジャン(Macaron Parisien)と呼ばれるタイプです。この形がいつパリで定着したのかは、19世紀半ばとも1930年ともいわれ、資料によって割れています。
パリで遭遇したマカロン・パリジャンは、菓子店では他の焼き菓子と同じように量り売りされ、有名メゾンでは1個ずつ売られ、ホテルでは客を迎え、土産物ではモチーフになっていました。好きな菓子を選ぶ調査では9位だったマカロンですが、その色とりどりの小さな丸い姿は、フランスやパリらしい菓子の象徴として、確かな存在感を放っていました。
※店舗情報や価格などは撮影当時のもので、現在とは異なる場合があります。ご訪問・ご購入の際は事前にご確認ください。


コメント